シリーズAにて4.5億円の資金調達を実施しました
株式会社エマルションフローテクノロジーズは、既存投資家であるリアルテックファンドをリード投資家として、本田技研工業株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社、KDDI Green Partners Fund(運営者:SBIインベストメント株式会社)、および岡三キャピタルパートナーズ株式会社を割当先とする第三者割当増資を実施し、シリーズAラウンドにて合計4.5億円を調達いたしました。これにより、2021年4月のEFT創業以来、同年7月に実施したシードラウンドでのリアルテックファンドの既出資分、同年10月に獲得したNEDO STSの助成金と合わせ、累計調達額は約6億円となりました。 EFTは今回の調達資金をもとに研究開発拠点の整備とチーム強化を進めるとともに、エマルションフロー装置のスケールアップ開発とプラント制御システム開発、リチウムイオン電池のリサイクル技術開発、そしてトータルサポート事業の拡大に取り組んでまいります。
EFTは、原子力機構が開発した溶媒抽出技術「エマルションフロー」を活用した事業を展開するレアメタルリサイクルベンチャー企業であり、2021年4月5日に設立、同年6月3日に原子力機構発ベンチャー企業として認定されました。エマルションフローは、従来の溶媒抽出技術と比較して、低コストで高効率に高純度な元素分離を可能にする革新的な技術であり、レアメタルを取り巻く社会課題の解決に寄与できると期待されています。特に、レアメタルリサイクル事業では、エマルションフローを活用することで、廃棄されたリチウムイオン電池(LIB)に含まれるコバルトやニッケル、リチウムといったレアメタルを低コストかつ低環境負荷で高純度に回収する技術を確立し、回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用する「水平リサイクル」を実現します。そして、レアメタルの地上資源を未来永劫使い続ける完全循環型社会を最速で実現します。
エマルションフロー技術説明
溶媒抽出とは、物質の分離・精製手法の一つであり、互いに交じり合わない液相間における物質の分配を利用することで、目的成分のみを選択的に抽出するための技術です。従来の溶媒抽出技術では、液相どうしを「混ぜる」、「置く」、「分離する」の3工程を必要としますが、エマルションフローは「送液」のみで、これら3つの工程をすべて同時に行うことが可能な革新的技術です。そのため、エマルションフローは従来技術の10倍以上の生産能力を可能とし、ゆえに従来比1/10以下のダウンサイズに加え、ランニングコストの低減を実現できます。また、連続処理が可能な多段エマルションフローを用いれば、99.99%以上の高純度化が可能であり、従来技術のミキサーセトラーと比較して低コストで高効率にレアメタルの高純度精製が可能となります。さらに、構造的な特徴から無臭で快適かつ安全な作業環境を実現するとともに、IoTを活用したプラント運転の自動化による人件費の削減も可能です。そして、エマルションフローの高い油水分離能力は、水相の廃水処理における環境負荷の低減を可能にします。
資金調達の目的
スケールアップ開発
今回の調達資金をもとに茨城県東海村に研究開発拠点を整備し、エマルションフロー装置のスケールアップ開発、およびプラント制御システム開発を加速します。金属製錬やLIBリサイクルへの利用を想定すると、実機スケールは1段あたり1000L以上の規模となるため、現在のラボスケールから10L、100L、1000L規模へとスケールアップを行います。既に100L規模の装置設計は完了しており、新たに整備する研究開発拠点にてその試験運転と構造最適化を重ね、1000L規模へのスケールアップを実現します。それと並行して、自動制御システムの開発を進め、エマルションフロープラントのシステム化を進めます。
リチウムイオン電池のリサイクル技術開発
リチウムイオン電池(LIB)のリサイクル技術開発に取り組みます。LIBリサイクルにおいては、LIBから回収したレアメタルを再びLIBに使う水平リサイクルはもちろんのこと、低コストかつ低環境負荷であることが求められています。EFTでは、エマルションフローのコンパクト、低コスト、低環境負荷という技術的優位性を活かしたLIBの高純度レアメタルリサイクル技術を確立します。そして、LIBリサイクル用のパイロットプラントの設計、整備を進め、2023年度にはそれを稼働させるとともに、そこで回収したレアメタルを使用して、お客様の求める品質の再生LIBを実現します。
トータルサポート事業の拡大
トータルサポート事業では、レアメタルリサイクルだけでなく金属製錬、化学、バイオなど、分離精製・有価成分回収、有機合成などのプロセスに関するお客様の課題に対し、それを解決するエマルションフロープロセスの提案を行うとともに、それを実現するための装置・プラントの設計、製造、導入、技術ライセンス、オペレーション支援等を行っています。今回の調達資金をもとに整備した研究開発拠点に広い実験スペースを確保することにより、トータルサポート事業における複数案件の同時並行対応を進め、トータルサポート事業の拡大を目指します。
チーム強化
今回の調達資金をもとに、LIBリサイクル技術開発やトータルサポート事業に関わる若手技術者の採用、ならびに、海外事業展開のための人員強化を図ります。
引受先からのコメント:
リアルテックホールディングス株式会社 代表取締役 永田 暁彦 氏
創業前である2020年にリバネスが主催する茨城テックプランターで最優秀賞を受賞し、その後に会社設立のご支援やシードラウンドにおける出資をさせて頂きました。以降、経営陣の皆さまのご尽力により、素晴らしいスピードで研究開発と事業開発を進めており、多数の大手企業等との連携が進捗しています。そして今回の資金調達を経て、EFT社が次のステージへと飛躍していくことを大変喜ばしく思います。新たに同じ船に乗って頂いた強力な株主の皆様とも一丸となり、EFT社によるレアメタルに関する課題解決を全力で支援して参ります。
本田技研工業株式会社 執行役専務 青山 真二 氏
Hondaは、グローバルなオープンイノベーションプログラム「Honda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)」※2を展開し、有望なベンチャー企業の探索・協業・出資・買収を推進しております。EFT社の革新的な技術により、将来的に増大する使用済みバッテリーからの再資源化が進むことで持続可能な社会の実現が加速するであろうと考え、今回の出資に至りました。EFT社の経営メンバーの強いアントレプレナーシップと高い専門性、並びにスピード感やチャレンジ精神による将来の更なる可能性に期待を抱いています。
SMBCベンチャーキャピタル株式会社 取締役 藤村 昌弘 氏
エマルションフロー技術は何十年も進化することがなかったレアメタルリサイクル界のゲームチェンジャーとなるだけでなく、化学やバイオなど様々な分野への展開が期待される有用な技術であります。今回、その技術を確立・事業化できるEFT社のチームと既に各産業界からの多数の引き合いに強い魅力を感じ、出資をさせて頂きました。SDGsに資するこの技術とEFT社が様々な社会課題解決に役立ち、そしてグローバルに羽ばたいていくことを期待しております。その為にSMBCグループとしても積極的なご支援をさせて頂ければと思います。
三菱UFJキャピタル株式会社 投資第三部 副部長 幡野 浩一 氏
リチウムイオン電池などに含まれるレアメタルのリサイクル技術は、日本にとって死活問題にかかわるものですが、エマルションフローはレアメタルリサイクルのゲームチェンジャーとなり得る画期的な技術と評価させていただき、この度出資させていただくことになりました。今回の資金調達により開発が加速し、低コスト、低環境負荷で高純度なLIBリサイクルシステムの実現に向けて大きく前進するものと期待しています。弊社もMUFGの一員としての強みを活かし、EFT社の事業成長に貢献して参りたいと考えています。
KDDI 株式会社 執行役員 コーポレート統括本部 副統括本部長 兼
サステナビリティ経営推進本部長 最勝寺 奈苗 氏
リチウム、コバルト等のレアメタル資源は脱炭素社会に不可欠ですが、供給量不足の懸念のみならず、サプライチェーン上の人権課題も指摘されていることから、リサイクルによる再資源化の需要がこれまで以上に高まっていると認識しています。EFT社の技術によって「都市鉱山」と例えられる使用済み携帯電話・スマートフォンに含まれるレアメタルを再資源化する水平リサイクルの実現を期待して今回の出資に至りました。今後、携帯電話のLIBリサイクルに係る実証に取り組み、EFT社の成長を支援することで、天然資源に頼らない循環型社会の形成を目指してまいります。
岡三キャピタルパートナーズ株式会社 取締役 高橋 知之 氏
家電製品や電子機器の発展に伴い、足元でレアメタルの需要がますます増加しています。未来永続的に需要を満たすためにはリサイクルが必須ですが、そこで用いられる溶媒抽出の技術において、残念ながら日本は出遅れているのが現状です。そのようななかで日本がこの分野でイニシアティブが取れる可能性がある「エマルションフロー法」の話を伺い、資源の有効活用という環境保全を実現するだけではなく、日本の技術力の高さを世界へアピールできる企業だと考えて出資を致しました。世界の競争に負けず、前進し続けてほしいと期待をしておりますし、弊社もできる限りの支援をさせていただく所存です。
※1:KDDI Green Partners Fund は、2021年11月に、KDDI株式会社とSBIインベストメント株式会社が共同で設立したコーポレートベンチャーキャピタルです。脱炭素社会の実現に向け、環境課題に取り組むスタートアップ企業を出資対象としています。
※2:Honda Xceleratorは、スタートアップ企業とHondaのコラボレーションを促進するオープンイノベーションプログラムです。本田技研工業株式会社の子会社で、米国・シリコンバレーを中心に活動を行っているHonda Innovations, Inc.が、グローバルに推進しています。